2023-11-27 言葉は矛盾を含んでいる
言葉を変えることからものの見方を変えることもできるんじゃないか、いや、それは根本解決にはならない、etc…という話をした。
言葉は一見誰の目にも同じものに見える。ひとつの映画を間に挟んでも、自分と相手が同じものを見たとは思わない。でも言葉は記号でもあるから、自分と相手が同じものを見ているように錯覚しやすい。
言葉は記号だけれど、でもその背後に含むものをその時によって変えられる。どんな社会がそれを使うか、どんな時代で、どういう時間の枠で使うか、誰が使うか、誰に対して使うか。同じ単語でもそこには多様な文脈が含まれる可能性がある。
相手がそのどれを選んでいるのか、またはどのくらいそれに自覚的なのか、こちらにそれを共有しているつもりなのかそうではないのか、さまざまな要因が実は言葉というものの背後を変える。
受け取る自分の側にも、その言葉に対してどんな経験的偏りを持っているか、相手がどの範囲を指し示しているかをどの程度推し量れるのか、
つまりこの組み合わせは無限で、言葉は実はとても立体的で、こんなに単純に文字として表されているにもかかわらず、だからこそ、お互いが同じものを見ているとは限らないのに同じものを見ている錯覚を起こさせるものなのだと思う。
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